腐食摩耗が発生する各種金型及び成型機部品の耐久性向上
フッ素ガス、塩素ガス、硫化ガス等が多く発生する樹脂にグラスファイバー等を混入した樹脂を原料として射出や押出成型をする場合、金型やスクリュー、三点セットなどが急激に腐食摩耗を起こし、頻繁に交換補修を行うケースが最近急激に増えています。
たとえば、PPS+PTFE+GF70%などのように、強度、耐薬品性、摺動特性を重視した樹脂を成形すると、金型や成形機部品が腐食と摩耗を同時に起こしてしまうケースが多発します。従来、金型材質をSUS420J2系(STAVAX等)で焼入研磨を施し使用する方法が取られていますが、ベント穴近傍、イジェクタ穴近傍、パーティング面、スライド部等の腐食摩耗を完全に防止することは大変困難となっていました。
一部でSTAVAXに表面処理としてTiNをコーティングし、寿命を延ばす方法を取っているものの、大きな成果を得られずにいます。また、焼入研磨を行うため焼入れ後の歪が多く、研磨しなければならず、納期面で問題となっています。
このようなケースの場合、下記材質と膜種の組み合わせに変更し、充分な成果が上がっています。
☆品名:スライドブロック 樹脂:PPS(PTFE+GF70%)添加 色:黒
(1)金型部品における対応内容
素材:STAVAX/表面処理:無し → 素材:NAK80/表面処理:ラジカル窒化+ACT
下地強化による膜の耐久性向上により、膜自身が本来持っている耐食耐摩耗性を充分発揮することが可能となり、従来3ヶ月程度の寿命が約13倍に向上した。また、焼入研磨工程を行っていたものをプレハードン鋼+ラジカル 窒化に変えることで、納期短縮や歪み防止に貢献した。
(2)成形機部品(スクリュー、三点セット)における対応内容
素材:KPS6/表面処理:無し → 素材:KPS6/表面処理:ラジカル窒化+CrN
スクリューや三点セットの場合、金型部品に比べ機械的な摺動が多いため、まず摺動特性を重点にし、その中で耐食性の高いCrNをコーティングした。三点セットの寿命は約4倍、スクリューは約2.5倍に向上した。
以上のように、腐食と摩耗が同時に発生するケースでは上記表面処理がかなり有効です。特に金型部品に対しては更新型の製作回数が減り、コーティング費用は増加するものの全体のコストダウンに大きく貢献できると考えます。
全てのケースで効果を発揮できない場合もあると思いますので、三点セットや、スライド、ピンなどの小さな部品でテストし効果を確認したのち、全体的に採用していただくのが良いと考えます。
私どもは、御客様の使用環境に合わせて素材の選定から表面処理まで一貫して技術を提供することを念頭に置いております。
弊社も含め、各メーカーが同じ敷地にあることで、異分野の技術を複合的に素早く提供できると考えております。改善に向けて御協力できることがありましたら、遠慮なく御問い合わせください。御待ち申し上げております。